インタビュー: かわP
改名前から魚高ミチルを知る元音楽業界のかわPが、最新アルバム「再燃」をインタビュー。
──令和のフォークソングをテーマに作った1stアルバム、「再燃」のリリースおめでとう。さっそくだけど、今回のアルバムはなぜフォークソングにしようと思ったの?
世代はズレているんですが、小学生の頃から70、80年代のフォークが好きだったんです。何故だろう?って不思議だったのですが、あの頃のフォークソングに”人間らしさ”を感じるから好きなんですよね。歌謡曲やJ-Popも大好きなんですが、フォークほど人間らしく、メッセージを感じるものはなかなかなくて。言葉やメッセージを伝えるなら今でもフォークが一番だと思っています。
──どんなフォークソングに影響を受けたの?
一番は中島みゆきさんです。中退して引きこもっていた頃に「ファイト!」を聞いたことをきっかけで音楽の道を志しました。そこから色々フォークを聞くようになって吉田拓郎、長渕剛さん、山崎ハコさん、森田童子さんなど、70、80年代のフォークソングにハマっていきました。今回のアルバムにも参考アーティストの雰囲気を醸し出したものもありました。
──参考曲って隠したい人も多いよね。
確かに、参考曲は隠すものなのかな笑 パクリにならないように作曲者は最新の注意を払うし、楽器構成を変えたりしてなるべくハズそうとするんですけど、私はわざわざ楽器構成を近づけたりしました。「この曲に影響を受けたのかな」ってリスナーが話してくれたら嬉しいんですよね。そしたらその原曲を話す機会や聞いてもらえる機会が増えるし、カバーをやってきた人間としては、そういう楽しみ方をしてもらえたら嬉しいです。
──なるほど、そういうオリジナル曲のあり方もありかもしれない。懐かしい感じもするんだけど、古臭くも感じないよね。そこは何か工夫をしているの?
それは嬉しいです。多分、メロディ、ミックスが大きいと思います。70~80年代のフォークソングは、単調なメロディが多いんです。語りに近いので、メロディアスとはまた違う。
だから私は単調な部分を作りつつ、メロディアスな部分も作りました。そうすることで現代のJ-Pop要素もありつつ、フォーク色を残せるかなと思って。あとはミックスの存在は大きいですね。最初はアナログレコードのイメージをお願いしたんですけど、返ってきた音源を聴いたらなんか違うなってなったんですよね。エンジニアの方にアナログ感をやめましょう!と言って1から作り直しに協力してもらったんです。そうするとやはり、インパクトが違った。令和でも埋もれない音楽ができたと思いました。
──いろんな工夫がされてできたんだね。個人的には今回の歌詞にも注目しているんだけど、歌詞で工夫したことなど聞かせて欲しいな。
今まで歌詞の個性のなさに悩んでたんですよね、この歌詞で分かるかな?ってなるべく伝わりやすく、分かりやすいものを選んできました。伝えなきゃ!って精一杯だったんです。でもここ数年、中島みゆきさんの曲をカバーしてる時に、読んだだけじゃパッと意味が分からないものが多くあって。自分の頭で紐解いた時に感動が爆発した経験があった。その経験に勇気をもらって、今回はみんなの想像にお任せしますって歌詞を採用することがありました。あとはユーモアを入れてみようって思って。
──”同情するなら餌をくれ”だね?笑 あれ好きだなぁ
ありがとうございます。ドラマ『家なき子』の名言、「同情するなら金をくれ」をモチーフにしてますが、最近の人は誰も分からないですよね。でも分かる人には分かる。それが無性に楽しくて。他の曲にも日本の名言混ぜ込んでるので、よかったら探してください笑
──その歌詞がある「野良猫」って曲はトー横キッズのことを描いたんだよね?なぜトー横キッズを描こうと思ったの?
トー横を見た時は驚きました。白目を向いて叫んでる女の子を見て、ここは日本だろうか?と思って。
その日に衝動的に描いた曲でした。明日に希望が持てない日本で、トー横の現状は起こるべきして起こったことだと思うんです。それが今の日本なんだと、目を逸らさないように描きました。
──この曲を聞いてまさに令和のフォークソングだと思ったよ。このアルバムを作ろうと思ったきっかけはあったの?
パンデミックがきっかけでした。あの頃、ライブもできなかったし、バセドウ病を患って闘病している時期でもあったので、音楽を続けるられるか不安でした。でもその頃、毎日のようにカバーリクエストが届いて。みんな歌を求めていると分かりました。私自身、いつもに増して歌を聴いていました。どんな辛い時も、聞きたい音楽あることは一つの希望だと思って。そして、そのことが音楽を続けるための大きな原動力になりましたね。
──改名前のアルバム「LOST」から聞いてるけど、「LOST」は別れについて描いているんだよね。今回も別れをテーマにした曲がいくつかあるね。
「LOST」は”別れ”を、今回のアルバムでは”別れの続き”を描きました。
大事な人を失って月日が経って、私たちはどう生きて、生きていこうとしているのか。そういうようなことを見つめてました。悲しみって消えることはなくて、時と共に形を変えていく。その時その時の想いの形を書き留めておこうと思って。
──魚高ミチルが見つめる”別れ”を今後も見守りたいね。今回「再燃」というタイトルにした理由は?
パンデミックで一度、私の炎は消えていました。だけど大好きな音楽と、リスナーのリクエストが私に火をつけてくれました。そんな音楽やリスナーへの感謝の気持ちと、これからまた燃えていきたいという想いを込めて『再燃』にしました。
──今の魚高ミチルを表すいいタイトルだね。このアルバムの最後の曲「伴走者」はどんな想いが込められているの?
中島みゆきさんの歌を中心に、70、80年代のフォークに支えられました。そんな歌たちを、次の世代にも届けたいんです。これからも歌っていくという私の志を歌いました。そして、そんな私を応援してくれるリスナーさんのことも伴走者だと思っています。今後も歌と、リスナーさんと伴に走っていきたいですね。リスナーさんにこの曲を届けていくことが今、一番したいことです。
魚高ミチル
YouTubeにて歌謡曲・フォークソングのカバー動画投稿を中心とした活動をおこない、その歌唱力と表現力の高さで根強いファンを獲得、動画の総再生数は3000万回を超える”令和のフォークシンガー”・魚高ミチル。
1stオリジナルアルバム「再燃」
70~80年代のフォークソングに影響を受けながら、東横キッズ、パンデミック、戦争、闘病、自殺など、現代に起きている様々問題に目を向けた令和のフォークソングアルバム。この時代を生きる人々に向けた魚高ミチル渾身の1stオリジナルアルバム。
「再燃」CD/サブスク各種
https://ultravybe.lnk.to/sainen
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